Organic cotton knit sleeve & Flow wide pants (oat)

8月。

seed and soilの二日間にわたるポップアップが終わり、その時間の中でワークショップを開いてくれた景都に会いに鎌倉へ向かった。

鎌倉で生まれ、鎌倉で育った彼女は、現在「月経教育者 / ストーリーテラー」として活動している。

丁寧な振る舞いと、おおらかであたたかな人柄。一緒にいると、こちらの呼吸までゆっくりとしていくような、不思議な心地よさがあった。

そして彼女からは、どこか遠い国の風を感じる。

彼女が伝えている「月経教育」は、私たちがその言葉から想像するものとは少し違っていた。

「これを食べないように」
「身体を温めて」
「こうした方がいい」

そんな、“身体を整えるための方法”を教えるだけのものではない。

もっと、自分の内側へと静かに潜っていくようなこと。

自分の身体を知ること。女性として生きること。そして、自分の中にすでにある力を思い出していくこと。

そんな彼女の言葉に、多くの女性が惹かれている。私たちも、そのひとりだった。

 

 

「月経教育者として歩み始めて、約6年になるんです。当時の私は、自分がそんなことを伝える人になるなんて、まったく想像していなかったのだけど。」

そう微笑みながら、景都は自分のこれまでを話し始めてくれた。

 

 

Organic cotton knit tank & Flow wide pants (oat)

自然と、海の向こう側

「小さい頃から青空保育に通っていたこともあって、自然が大好きだったの。父がアパレルブランドを営んでいて、アンティークの雑貨やレコードの買い付けで、よくハワイにも連れて行ってもらっていました。」

幼い頃から、ハワイは遠い外国ではなかった。

小学6年生でフラを始め、中学、高校と夢中になり、高校卒業後にはそのままハワイへ渡った。

「留学先は、両親も好きだったハワイ島のヒロ。ヒロのコミュニティカレッジに入学したのですが、ものすごく田舎で。でも自然が本当に豊かでした。」

なかでもよく通っていたのが、Keaukaha 。

マウナロアから流れる冷たい湧水と海水が混ざり合うその場所へ、毎日のように足を運んでいたという。

「田舎だからこそ味わえるハワイでの暮らしが、私に合ってて、すごく豊かな毎日でした。」

そう言って彼女はハワイでの暮らしを懐かしんでいた。


Organic cotton knit sleeve

コミュニティカレッジを卒業した後は、OPTを利用してオアフ島へ。

Kaimana Beachの水着屋さんで一年間働き、その後は学生に戻り、カリフォルニアで生活を送った。

20代前半の多くの時間を、海外で過ごしてきた。


“目に見えないもの”

「実は高校生の頃から、ヒーリングに興味があったんです。」

在学中にはオアフ島まで足を運び、潜在意識へ働きかけるヒプノセラピーの勉強会にも参加していた。

景都にとって、いわゆる“精神世界”は特別なものではなかった。

鎌倉という土地で育ち、目には見えないものを大切にする人たちが身近にいたこともあり、それらは幼い頃から、ごく自然に暮らしの中に存在していた。

けれど、彼女が本当に興味を持っていたのは、もしかすると“人”そのものだったのかもしれない。

「そもそも、人に興味があったんだと思います。“なんで人は傷つくんだろう?” “なんで意地悪になるんだろう?”って。そういう感情について勉強していくと、自分なりに少しずつ説明がつくようになっていきました。」

高校生の頃からレイキやオーラソーマなどを学び、ハワイで暮らす中でも、土地に根づくスピリチュアルな感覚に触れてきた。

その感覚は、少しずつ研ぎ澄まされていき、やがて23歳で日本に戻ってからも精神世界の探究は続いた。




『女性の力』Organic cotton knit tank

「小さい頃から、夢を見ない日はなかったです。」

月経教育へと導かれていった始まりにも、ひとつの夢があった。

「29歳の時に見た夢で、砂漠みたいな場所に50人くらいの女性たちがいて、みんな黒い布をまとっていたんです。その女性たちが砂嵐の中で『おい、おい、おい、おい』って、声を出して泣いていて。」

「たぶん、彼女たちの村が何かに襲われて、悲しみの中にいたんだと思うけど、半分の女性たちは、悲しみに反応するように泣いていました。でも、もう半分の女性たちは、声を出して泣くことで、その悲しみ自体を昇華し、変容させているように見えたんです。」

その姿は、悲しみに打ちひしがれているというよりも、力強かった。

まるで土地や人々が抱えきれない悲しみまでも、彼女たちが声にして、生まれ変わらせているようだったという。

目を覚ました景都は、すぐにノートを開いた。

夢の中で感じたこと。
直感的に受け取ったもの。

そこに浮かび上がってきたのが、

「女性の力」

という言葉だった。景都はその夢から、メッセージを受け取ったと話す。

 

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その夢に導かれるように始まった、Women's Circle。

女性たちが集い、女性の身体や内側に宿る力について語り合う時間をつくるようになった。

「私にとって“女性”というテーマが、ものすごく自分を導いてくれている気がします。私自身が“これをやりたい”って選んでいるというより、やらされているような感覚に近いです。」

そして景都は、“泣く”ということについて話してくれた。

 

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「女性が泣くと、ヒステリックって言われがちだけど、泣くこととか、感情そのものって、ものすごく力があると思うんです。」

かつて、葬送の場などで泣くことを役割とする女性たちがいた文化の話に触れながら、彼女は続ける。

「声を出して泣くことで、家族やその場にある悲しみを儀式としてプロセスする役割があったそうなんです。」

泣いても何も変わらない。泣かずに我慢した方がいい。感情に流されてはいけない。

そんな言葉を、私たちはいつの間にかたくさん覚えてきた。

「でも、そうやって感情を抑えることを求められる中で、女性が本来持っている力を発揮できない環境も、たくさんあるんじゃないかなって思います。」

弱さだと思っていたものが、実は力なのかもしれない。女性の力は、私たち自身が思っているよりも、ずっと大きい。

景都は、あの日の夢からそんな感覚を受け取った。

 

『バリで出会った、月経という世界』

そして2020年3月。

景都は、あるトレーニングを受けるためにバリ島へ向かった。

「私にとって一番最初の月経の先生、Usha Anandiという女性が、2週間のファシリテータートレーニングを開催していました。女性の神経系的反応や身体、心理を理解した上で、サークルをファシリテートする方法を学ぶプログラム。」

彼女は、月経を学ぶために行ったわけではなかった。

けれど実際に参加してみると、プログラムの多くを占めていたのは、月経についての話だった。

 

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「月経サイクルの中にも、春夏秋冬みたいなシーズンがある。」

冬には木々が葉を落とし、一見すると何も起きていないように見える。けれど土の下では、根が静かに栄養を蓄えている。

春になれば芽吹き、夏には花が咲き、実をつける。そして秋には色づき、やがてまた葉を落としていく。

「女性のホルモンも、そんなふうに変化していく。女の人は毎月、自分の身体の中で自然界の四季のような変化を経験しているんだよって教えてもらいました。」

「最初に聞いた時は、“何事?!”って驚きました。そんなこと今まで一度も聞いたことがなかったから。」

けれど、その知らなかった世界に触れるほど、今まで自分の中にあったいくつもの疑問が、するするとほどけていったという。

「社会のつくりって、男性のホルモンリズムに合わせてできているんだよ、って教わった。」

男性の性ホルモンは、太陽と同じ24時間周期で、夜から出始めて午前中にピークを迎え、午後にかけてメローになる。

朝の方が元気があって、午後にかけて落ち着く。

月曜日から金曜日まで働き、土日の二日間で休み、また月曜日から同じリズムを繰り返していく。

景都がそこで学んだのは、男性のホルモンには一日の中で変動があり、月のリズムで出来た女性の身体にはそれとは異なる、月経周期に伴う変化があるということだった。

「女性は月経周期の中で、身体も変わるし、脳の働きも、感覚も、社交性も変わっていく。」

毎日、同じ自分でいられない。

昨日できたことが、今日はなぜかできない。
人に会いたい日もあれば、静かにひとりでいたい日もある。

それを私たちは、ときどき“自分の弱さ”として受け取ってしまう。

「なんでできないんだろうって、自分に鞭を打つように厳しくしてしまうことがありますよね。でも、私たちは女性の身体を持ちながら、その変化が前提になっていない男性のホルモンリズムに合わせた社会の中で、毎日同じように頑張ろうとしているからなんです。」

 

バリでの学びによって変わったのは、月経への考え方だけではなかった。

景都の意識は、それまで以上に自分自身の“身体”へと向かっていった。

「私、“身体”っていう、もっと大切な部分を見落としていたんだって思いました。瞑想をしたり、精神的な学びを深めたり。長い間、自分の内側を知ろうとしてきたけど、先生から言われたのは、女性はわざわざどこかへ修行に行かなくても、
自分の身体そのものの中に、たくさんの答えを持っているということ。」

「それを聞いた時、ものすごく感動したと同時にすごく腑に落ちたんです。」

生理痛に当たり前に慣れていたと言う彼女。

強い痛み。
吐き気。
身体を起こしていることさえつらいほどの倦怠感。

けれどあまりにも長く一緒にいたからこそ、それがいつの間にか当たり前になっていたことにハッとさせられたと話した。

「精神的なトレーニングや、心のあり方については、ずっと学んできたんだけど、それでも、この時初めて、頭と心と身体が、ひとつの自分としてつながったような感覚がありました。」

そして、2週間のトレーニングが終わる最後の日。

景都に月経が訪れた。

 

Organic cotton knit sleeve

「今までと全然違いました。いつもは強い痛みや吐き気があって、身体も究極にだるくて、立っていられないくらいつらかったのに。救急車で運ばれるほどの経験もしたことがあるくらい。でもその時は少し痛みがあるくらいで、普通に生活ができました。」

最初は、バリで過ごした高揚感やアドレナリンのせいだと思った。

けれど日本へ帰ってからも、その変化は続いた。

「本当に驚いた」

たった2週間。

何かを厳しく制限したわけでも、
特別なものを摂り続けたわけでもない。

「もちろん、いつもと違うことはたくさんしました。みんなで大きな声を出したり、踊ったり、歌ったり。精神的なエクササイズもした。バリのご飯がヘルシーだったこともあるかもしれませんが。」

「でも、何かを強制的にやめたり、始めたりしたわけじゃない。それなのに身体がこんなに変わったことが、すごく不思議でした。」

それから、以前のような重い生理痛に悩まされることは減っていったという。

「今日も実は生理一日目なんだけど、こうやってインタビューに来て、普通に話していられるなんて、生理痛がひどかった頃の私には、考えられないことでした。」

そう言って、彼女は微笑んだ。

 

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『自分の身体の尊さ』

「今振り返ると、私たち女性が、自分たちの身体を“尊い”と思えるようなきっかけがあった時、すごく深いところで、何かでは起こせないようなヒーリングが起きることもあるのかなって思っています。」


“自分の身体の尊さ”

その言葉が、しばらく頭の中に残った。


自分の身体を、心の底から“尊い”と思ったことのある人は、どれくらいいるのだろう。


当たり前に動いてる心臓、傷ができれば勝手に治そうとしてくれる。眠れば回復するし、女性の身体なら、勝手にホルモンが動いてくれて生理がきたり。

自分が指示してるわけではないのに、身体は毎日ものすごく複雑なことをして、命を保ってくれる。

自分の身体を好きになるのとは違う感覚だ。


私たちはいつの間にか、身体を「見られるもの」として捉えることに慣れている。

細い、太い。
肌がきれい。
老けた。
健康的。
魅力的。

鏡に映る自分を見ながら、外側から自分の身体を評価している。

けれど身体の本質、命、生命、魂は、もっと内側にあるものなのかもしれない。


「この手で美しいものに触れた」

「この足でいろんな場所へ行った」

「この目で忘れたくない景色を見た」

「この耳で大切な人の声を聞いた」

「胸が締めつけられるような悲しさも、震えるほどの喜びも、この身体で感じた」


たとえ、自分の外見に好きになれないところがあったとしても、そんな本質に気づくことなんだと思う。

「この身体で生きていることを、当たり前にしないこと」が自分の身体を尊い存在として感じることなのかもしれない。

景都の話を聞きながら、そんなことを思った。

 

2020年。

バリから帰国して間もなく、世界はパンデミックに入り、暮らしは大きく変わった。

家で過ごす時間が増えた中、景都はバリで受け取ったものを、もう一度自分の中で紐解いていった。

学び直し、自分なりに解釈し、知識を深めていく。そして少しずつ、それを誰かと分かち合う場をつくり始めた。

「パンデミック中だったので、みんな家にいて、いろんなことをインプットしていた時期だったと思います。そんな中、オンラインで自分の学びや経験をシェアしてみたら、驚くほどたくさんの人が集まってくれました。」


月経について学ぶために、バリへ行ったわけではなかった。月経教育者になろうと、決めていたわけでもなかった。

女性たちの泣き声を聞いた、あの日の夢。「女性の力」という言葉。

バリで偶然出会った月経の世界。そして、自分自身の身体に起きた変化。

点だった出来事が、あとから振り返ると、ひとつの線になっていた。

気づけば景都は、月経を通して、
女性がもともと身体の中に持っている力を伝える人になっていた。

 

「私たちは、自分たちの力を忘れすぎていると思っていて。私は、その人の中にある女性の力を思い出すきっかけをつくる役割があるのかなって思うんです。」

自分で道を選んできたというよりも、

何かに呼ばれるように。何かに導かれるように。

その旅は、今も続いている。

 

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「朝が好き」

柔らかな笑顔で、生まれ育った鎌倉での暮らしを話してくれた。

「朝、いつもの道を散歩しながらカフェに行って、美味しいコーヒーを飲んだり。静かな時間に本を読んだり、プロジェクトの構想を練ったりするのが好きです! 」

景都がつくるものには、目には見えない温度がある。

彼女が大切にしているのも、まさにその“温度感”なのだという。

「自分が見えている世界とか、感じているものの温度を、まず自分自身が理解すること。それが相手にも伝わるように、写真や言葉を添えて表現することを心がけています。」

土に触れた時の感触。苔に残る湿り気。肌に触れる風。

生きている身体の、生々しさ。

「私たちだって、生身の、肉肉しい存在でしょう。それを現代の“美しさ”の型に閉じ込めたり、“いい女の子”みたいな型に入れたりすることはできないと思うんです。」

整いすぎていないもの。野生のままのもの。言葉になる少し手前にある、感覚。

彼女は、そんなものをとても大切にしている。

「野生的な美しさや感覚、考え方を、すごく大切にしている。」

 

最後に


「私は、月経にはその人だけのストーリーがあるっていうことを伝えていきたいです。」

月経とは、なんなのだろう。

汚れなのか。痛くて、面倒で、できることなら早く終わってほしいものなのか。女性であることを感じさせてくれるものなのか。命とつながるものなのか。

正解は、ひとつではない。

「“あなたにとって、月経ってなんですか?”って聞いた時に、一人ひとりが“私のストーリーはこうです”って言えること。それも、女性の力を取り戻していくひとつの形だと思っています。」

自分の身体に起きたことを、誰かの答えではなく、自分の言葉で語ること。

「一人ひとりの女性には、神話があると思っていて。」

神話の中には、いつだって何かしらのチャレンジや試練がある。

迷うことも、傷つくことも、立ち止まることもある。けれど、完璧になることがその物語のゴールではない。

何が起きたかではなく、その出来事と、自分がどう向き合ったのか。

どう感じ、何を受け取り、その後をどう生きていくのか。

そこから、その人だけの新しい物語が生まれていく。

彼女の話を聞きながら、尊さとは、自分が歩いてきた時間を、自分の言葉で受け取り語ること。

誰かに与えられた物語ではなく、自分自身で、自分のストーリーを持つこと。

そのストーリーそのものが、その人の尊さなのかもしれない。

どういうストーリーを、どう持つのか。

そして、

あなたのストーリーは、なんですか?

 

平川景都 

月経サイクルガイド/ストーリーテラー


女性一人ひとりが主体となり、多種多様な環境で命を輝かせる野花のように野性的で芳しい「地球の娘として気高く生きていく」というビジョンのもと、月経の生理学、歴史、文化、スピリチュリティ、フェミニズムまでを包括したホリスティックな内容の対面・オンラインのワークショップ、オンラインサロン、指導者養成、発信等の活動を展開。


ウェブサイト https://songofawoman.squarespace.com/

インスタグラム @keitohirakawa @songofawoman

 

 

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